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『死神くん』3話

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このドラマは、雰囲気も取り扱う内容も静まり返った深夜にふさわしいものですが、まだ「死」から遠いところにいるような子供たちにこそみて欲しいと思える物語だなあとつくづく感じます。原作ファンは現在のアラフォー世代(かなと見受けられる)、子供の頃に漫画を読んでいて、ドラマ化に伴って蘇ったのであろうその頃の記憶や心情を語る姿をみていると、余計にそういう風に思えます。

今回死神が死期を知らせに訪れたのは大邸宅に暮らす社長令嬢、西園寺瞳。心臓の病気を発症して以来外出もままならず床に臥せっていた彼女は、最期の日々を少しでも自由に過ごしたいと語り、死神の協力のもとに家の外に飛び出します。

そのころ、定職もなく友達もいないロクデナシ青年桐嶋は、何気なく入った教会で悪魔に出会い、3つの願いを叶えることと引き換えに魂を求められ、それに応じます。彼の最初の願いは「声をかけた女性がすべて自分に惚れること」

瞳と桐嶋が秋葉原のゲームセンターで出会い行動を共にすることになると、それぞれの人間にとりついた死神と悪魔も初体面を果たすことに。死神側は予定外の死者を出すわけにはいかず、悪魔と青年の契約を妨害するため、桐嶋の前にも姿を現し語りかけますが…

 

死神業の競合他社に例えられた悪魔(菅田将暉)の初登場!良い存在感ですね。ライバル出現の影響か、厳しい上司であるところのカラスと死神くんの関係性にちょこっと歩み寄りの兆し。

病弱なお嬢様に協力する死神くんのやり方が、庭の彫像をガンガン倒して壊すは店先から催涙スプレー盗むはそれを容赦なく人間に浴びせかけるは(かなり念入りに!)無知で無垢な子供のごとき容赦のなさでおかしかったです。「悔しい」という言葉の意味も知らなかったり、死神くんて本当に生まれたての存在なのかも。考えてみれば、1話から少しずつ色々なことを覚えて学んでいっているような感じですね。毎回飲食物を口にしているのも面白いです。今回は紅ショウガをつまんで酸っぱい顔になってました。か、可愛い…

悪魔と契約をした桐嶋くんの救いのないクズのキモオタっぷりがリアルでした。元のお話の桐嶋くんは不良という設定らしいですが、現代風にろくでなし人間を造形するとこうなるのか。

そんな彼が、ほんの少しずつ瞳お嬢様と心を通わせて変わっていく過程が、段階を踏んできちんと描かれていたのがとてもよかったですね。

父親の愛を確かめたい瞳は桐嶋の協力のもとに狂言誘拐を計画しますが、思うような結果にはなりません。また、悪魔と契約をした桐嶋のもとにはたびたび悪魔が現れ、望みをかなえると唆します。

瞳は父との思い出の場所へ行きたい言い、桐嶋はその望みをかなえてやろうと決めて、二人は海へと向かうのです。孤独でか弱い存在である二人の逃避行は、結末のみえる道程に思えました。瞳の護衛達による妨害にあったことで桐嶋は足に怪我を負い、二人は目的地を目前にへたり込みます。

3つ目の願いとして海までふたりを連れていくと言う悪魔。

伸ばされた手を掴みとり、桐嶋をさとす死神。

瞳もまた、桐嶋の死を望みはしません。

過剰な演出のない海までの二人きりの道のり。海にたどり着くころ、彼女は静かに息絶えました。まさか間に合わないとは。父親が本当に最後の最後まで登場しないとは。

このシビアさは原作の力ですね。運命のやるせなさが尾を引いて、曇天の海の風景といっしょに静かに心に刻まれました。

最初は確かにろくでもない人間に思えた桐嶋は、瞳に選ばれたことで、そしてほんの少しの時間心の底から頼られて慕われ、死後に花を手向けるという約束を交わしたことで、人間として大きく変わります。この後のシークエンスでその姿がすこしだけ見られてよかったです。

人間同士の関係は生前と死後とでもちろん変わるものですが、本当に長く強く影響を及ぼすのは死後の他者との関係なのではと思うのです。それは信仰も同然で、その人の倫理規範となり道徳観念となり、もう彼に道を踏み外させはしないのではないかと。そう感じられる最後の桐嶋くんの表情でした。

そんな人間界をのぞむ天界でのカラスと死神のやりとり。

「おまえも少しはがんばったな」「え…っ」

初めて褒められて驚いた後に思わずにへらっと笑っちゃうところがとってもキュートでした。

ラストに衝撃の事実。死神はルール違反によって寿命が縮まっていくというもの。413号さんは3話までの間にだいぶ短くなってしまった様子です。最初に教えてやっておくれよ…

来週はワンシチュエーション・サスペンス♪こういうタイプの映像作品は好きなので楽しみです。