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フェリーニの『道』 ビョークの『ネズの木』

フェリーニの「道」

大道芸人の男ザンパノと、彼に買われた精神遅滞の少女ジェルソミーナは、旅芸人として各地をまわるが、粗野で乱暴なザンパノはジェルソミーナにつらくあたる。ジェルソミーナの、自分の存在は無意味だという痛みと悲しみはとても辛くて、でもその苦しみの分だけ、「この小石にも意味があり、これが無益ならすべてのものは無益だ。」という言葉が心に染みてくる。

フェデリコ・フェリーニという名前は知っていたけれども、彼の作品をきちんと見たのはこれがはじめてで、イタリアの人だということも知らなかったくらい。
オールドムービーだからあたりまえなのだけれど、あの白黒の画面が光と闇のコントラストを際立たせていて、カラフルとは違う美しさ、映像というものの魅力を感じます。優しい救いとなる夜の会話。白昼に起こる衝撃の事件。

神が手を差し伸べるように、彼女の前にはたびたび彼から離れる選択肢が現れる。しかし健気なジェルソミーナは、「私がいないと、彼がひとりぼっち」という無垢な心で、懸命にザンパノについていく。そしてそんな彼女こそが、ふと、なにか天上の存在のように感じられます。
物悲しくノスタルジックな音楽が印象的。この映画を思い起こそうとすると、どこか遠くからこの音色がただよってくるようで、きっと、そういう映画はなかなか忘れません。

 

ビョークの「ネズの木」

冒頭の詩にぐっとつかまれてしまい、雰囲気に飲まれながら最後までみました。
舞台は中世アイスランドの不毛で壮大な荒野。グリム童話「ネズの木」を元としたダークファンタジーで、白黒映像がかえって艶かしいと感じます。
20歳(か22歳という話も)のビョークは、魔女裁判で母を亡くした姉妹の妹役。この映画の中で彼女が時々口ずさむ歌声は、たとえば高く昇っていくようなものではなくて、ただ淡々と自分を慰める物悲しくか細いもの。
グロテスクな呪術が日常のすぐ隣にある薄ら寒さ、人のもつ闇、見終わった後のなんともいえない気持ち。でも、楽しいとはいえないけれど、余韻はそれほど悪いものではありませんでした。

 

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